風化するとか言われているけど
そう思っているのは被災していない人や
遠くに遠くにいて他人事だと思っていた人

被災した私たち本人たちにとっては
風化とか、忘れるとか、考えられない

程度の差こそあれ
それはもちろん
とてもとても大きな程度の差はあるけど
でも、あの時を
現場で体験した私たちには
風化とか、考えられない

確かに普段は思い出さない日が多くなった

でもこの日が近づいてくれば
否が応でも思い出される
あの日のすべて

いつまでもいつまでも揺れがおさまらなくて
どんどんどんどん大きくなって
とうとうビルの外に逃げ出したこと

交差点の真ん中で
みんな立ちすくんでいたこと

しゃがみこんで
泣いている女性もいたこと

そこにお寺の瓦が落ちてきたこと

店に戻ったらものすごいありさまになっていたこと

その時点ではそこまで大ごとだとわからず
明日は土曜日で店が混むのにどうしようと
必死で片づけをはじめたこと
でもすぐにそれは無理なことに気付いたこと

S-PALで、あの時はまだ学生バイトとして
今の職場で働いていた栞が心配で迎えにいったら
信号のつかない東口前の大通りの交差点が
どちらが進めば衝突しないですむのか
車がごちゃごちゃになっていたこと
そしてやっとついたら
駅ビル倒壊の恐れがあるので入らないで下さいと警察官に止められたこと

倒壊？
中で娘が働いているんですけど！！

そこに大雪が降ってきたこと
ざんざん降ってくる雪を見ながら
呆然と立ち尽くすしかなかったこと

スタッフを私の車で、彼女の家まで送って行ったら
実は津波に向かって走っていたこと

街灯も信号もつかない真っ暗な道を
ヘッドライトの灯りだけで
何時間も何時間も走ったこと

地震発生から４〜5時間後
やっと家に帰ったら家族に会えたこと

その喜びでガラスを踏んだことなど気づかず
かかとが血だらけになっていたのに
次の日やっと気づいたこと

すべて思い出すあの日の前後

あの日の後のことは
ずっとずっと大変だったことはもちろんみんな知っているから
あの日の前のことを書こうか

あの日の前の半月くらい
私はいつも怒っていた
嵐の新曲のLotusを
よく聞いていたっけ。
歌詞の内容がなんだかつらいもので
あの時の私の怒りや悲しみにマッチしていて
いつか何かが壊れる時が来ると思っていた
別に私に何があった訳でもないのに
まるでこれから起きる震災のことを
わかっているような歌詞の内容

地震の予知とかとは無縁だけど
今に何かが揺れて壊れていく感覚があった

マグマの感覚だったのか

あの日の朝、
普段は仕事で邪魔になるから
エステの仕事でなくしてしまうから
ぜったいつけていかない指輪を
両手にはめていた
なんの予感もなかったのに
不思議な話だ
結婚指輪を左手に
栞からプレゼントされた指輪を
右手にはめていった
今まで一度も
仕事につけていったことはなかったのに

いろんな不思議なことが
みんなの身の回りで起きていた
誰に聞いてもそんな話がつきない

戦争体験とか
原爆のこととか

体験者がいなくなってしまったら
必ず風化してしまう

体験者には決して風化しないから
私たちが生きているうちに
しっかりと伝えないと

毎日普通に生きているから
毎日こんな悲しい話はできない

でもこの日がやってくる限り
その日だけでもいいんだ
伝えよう３．１１のこと。

私はこのブログで伝えたよ
あなたはどうする？






電気がやっとついて
店の片づけを手伝ってくれた栞。
５年後には母親になっているとはね。
命をありがとう

♪今でも蘇る記憶は　傷だらけガラスのようで
　刻み込まれてる　明日を信じてる♪